地域課題解決の手引き ~②アクションプランの作成~

 皆さんこんにちは、まつきおです。前回はNPO法人ほほえみの郷トイトイの事務局長で、各地で地域づくりの支援を行っている高田新一郎さんに、地域ビジョンの策定について解説していただきました。今回は、前回の続編ということで、「アクションプランの作成」について解説していただきます。

目次

アクションプラン作成のおおまかな流れ

ーー 今回は「アクションプランの作成」についてお聞きします。アクションプラン作成の大まかな流れについて教えてください

 私が地域づくりのご支援を行う場合、アクションプランの作成は、大きくは3つのステップで実施しています。ステップ1は「課題の洗い出し」、ステップ2は「洗い出した課題の優先順位付け」、ステップ3は「実施計画の作成」といった流れです。期間は、ケースにもよりますが概ね、レクチャーに約1日、ディスカッションに約1日、決定に約1日で、2〜3日かけて実施することが多いです。ここに参加いただくメンバーは、前段階のビジョンの作成で参加したメンバーとほぼ同じです。ただし、課題の分野によっては、追加でメンバーを集めても、もちろん構いません。

STEP1:課題の洗い出し

ーー ステップ1の課題の洗い出しでは、どのようなことを実施するんですか?

 私が地域づくり支援を行う場合は、課題の洗い出しは、すでに前段階で、ビジョンの作成ができている状態で始めるようにしています。重要な点ですが、必ず、「ビジョンの作成」→「課題の洗い出し」の順番でやることですね。というのも、ビジョンができていない状態で課題の洗い出しを行うと、本来であれば無視していい課題や、後回しにすべき課題も、どんどん、際限なく抽出してしまうからです。

 課題は、少ないに越したことはないんですよね。なので、必要最低限の課題を抽出するためにも、必ず、ビジョンを先に作る様にします。これによって、「ビジョンを実現させるために、課題となっているものはなにか?」という視点で課題の洗い出しができる様になります。

ーー 具体的には、どんなことが課題として挙げられるんですか?

 例えば、地域のビジョンが「地域で安心して暮らせるようにしたい」だったとします。すると、「地域で安心して暮らすために、今、障害となっているものは何か?」という観点で、課題を洗い出すことができます。課題は、「だれでも、緊急時に病院にいけるようにする」や「だれでも、日常の買い物にこまらないようにする」などになります。

このような流れで、課題をどんどんリストアップしていきます。

STEP2:課題の優先順位付け

ーー ステップ2の課題の優先順位づけでは、どのようなことを実施するんですか?

 洗い出した課題に対して、優先順位をつけていきます。ここで重要なことは、いろいろな人の立場に立って、順位を考えなければいけないということです。

 例えば、高齢者の多い地域を考えてみます。高齢者が多いため、高齢者の立場に立って、「移動手段の確保」や「高齢者の見守り」など、高齢者向けの課題解決を優先しがちになってしまいます。でも、高齢者が多い地域でも、子育て世代の住民がいるのであれば、やはり、その様な住民の立場にもたち、課題を考える必要があります。もし、メンバーに偏りがある場合は、該当するメンバーを新たに入れたり、ヒアリングをすることも大切です。

このように、いろんな人の立場に立って課題を洗い出すことで、課題の抜け落ちを防ぐことができます。

ーー その他、課題の優先順位付けで、大切なポイントはありますか?

 以上のような流れで、出てきた課題をリストアップし、順位付けをしていくんですが、課題同士を見比べることで、ある課題Aを解決すれば、必然的に課題Bが解決することができるという様な、課題間の関連性などが見えてくることがあります。このような課題ごとの関連性が見えた場合は、課題Bと言うものを削除して、課題Aだけを残す様にします。こんな感じで、課題を整理することで必要最小限の課題に抑えることができるんですね。こんな風にしながら、課題間の関係にも注意しながら、メンバーで話し合いながら、優先順位をつけていくといいですよ。

STEP3:実施計画の作成

ーー ステップ3の実施計画の作成では、具体的にどんなことをやるんですか?

 具体的な実施計画をみた方がわかりやすいと思うので、私が住んでいる山口市阿東地福地区で作成した、アクションプランを例にとって、見てみましょう。これが実際に作成したアクションプランです。

ーー 実施計画の作成におけるポイントはなんですか?

 一般的に計画というと、1年間など、期間を決めることが普通だと思います。ただ、私の場合は、期間は定めないことが多いです。というのも、企業や個人と違って、地域のビジョンというのは、明確な数値目標を立てることがなく、「数値的なゴール」というよりも、「進むべき方向性」という意味が強いため、地域づくりも期間を決めて取り組むより、将来にわたって継続的に取り組む方が重要だと考えるためです。

ーー 具体的に実施計画の作成方法を教えてもらえますか?

次の様な、アクションプランのテンプレートに課題を埋め込んでいくと、実施しやすいと思います。

 まず、横軸に、課題の観点を並べます。多すぎるとわかりにくいので、3〜7つ程度にしておきましょう。課題の観点は全ての課題に対して、似たもの同士をグルーピングすることで、適当な数にまとめるといいでしょう。

次に、縦軸に、取組の主体を並べます。ここも多すぎると煩雑になるので、2〜5つ程度並べましょう。

 そして、最後にそれぞれの課題の観点にそって、取組の主体が取り組むべき課題を優先順位順に書いていきます。それぞれの主体については、取り組むべき課題は3つ程度に押さえておくといいでしょう。

行政との関わり方

ーー 最後にアクションプランを実現させるために重要なポイントはありますか?

 アクションプランも作っただけでは意味がありません。とはいえ、取組を実施するにしても、予算が必要になるでしょう。そのような場合に、重要になるのが行政との関わり方になります。

 ビジョンやアクションプランができたら、ぜひ、地元の役場など自治体に報告をしましょう。これによって、自治体からの支援も受けやすくなります。

 このような地域のアクションプランがない状態で、自治体に話を持ちかけても、なかなか自治体も具体的に支援はしづらいでしょう。しかし、地域の総意のビジョンとアクションプランを持って、課題解決のために予算を確保してほしいなどと持ち帰れば、相談にも乗ってもらいやすいです。

 特に、自治体の計画やすでに確保した予算の取り組みであれば、自治体からの支援は取り付けやすいです。このように、自治体を動かすためのツールとしても、地域のビジョンやアクションプランは重要です。

ビジョンができたら、アクションプランをつくろう!

 「地域の将来像」であるビジョンを描いたら、次はアクションプランを作成すればいいわけですね!ただ、そのビジョンを実現するためにどのように動けばいいのか、そのアクションを行うために必要な予算、自治体や市などの支援や補助などを味方につけやすい…桃太郎でいう犬、猿、きじたちを味方にするためのきびだんごを携えて鬼(地域課題)に立ち向かうイメージですね!
 「地域課題」「課題解決」というとついつい課題ばかりに目がいってしまいがちですが、ビジョン「鬼が島へ鬼を退治して地域に安心を取り戻す」、アクションプラン「ひとりでは鬼には太刀打ちできないので仲間を集める」といった順序だてた構想と計画づくりがかかせないというのがわかりましたね!皆さんはどうやって地域の将来像を描くために描き、行動をしますか?ぜひ、参考にしてくださいね!

筆者(サイト運営者)

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