トイトイがお惣菜の販売に進出することになった経緯について

こんにちは、山口県山口市阿東で地域おこし協力隊をしている佐伯です。これまでトイトイの設立までのエピソードを紹介してきました。有志で集まったメンバーでできたトイトイですが、現在は手作りのお惣菜を販売もしています。今回はそのトイトイがお惣菜を作り始めるまで経緯について紹介します。

目次

お惣菜販売のきっかけ

トイトイは地域の足が悪い人や車などの交通手段をもたない人のために移動販売も行っています。移動販売を継続して行ってきましたが当時は一人で地域を回っていました。助手席が空いていたので地域のお母さん方に助手席に乗ってもらっていました。冗談で地域のお母さん方に何が欲しいか聞いてきてと頼むと、本当に聞いてきて「手作りのお惣菜が欲しい」と言われました。地域の中にも車で行けるところにスーパーがあり、そこでも惣菜は買えます。だからトイトイで作る必要はないだろうと思っていましたが、お惣菜はお惣菜でも一人暮らし用の小さいサイズが欲しいと。地域の方は高齢者が多い故に伴侶が亡くなって一人暮らしというのも少なくありません。お母さん方はできるだけ地域の方の意見を聞いてあげたく、料理ができるからと厨房を作れというのです。ですが当時の移動販売車はワゴンRで高田さんは本格的な移動販売車を買おうと考えていました。だから無理だと伝えました。それでもお母さん方の熱意は尽きることなく、家で作って持ってくるから売ってと言うのです。お母さん方が材料費や若干の手数料をもらうだけ。トイトイからしてもリスクもなくメリットしかなかったのでOKを出しました。これがお惣菜を販売し始めたきっかけです。

お惣菜販売計画

お惣菜を販売すると決めてからは早かったです。決まったのが5月ごろでしたが、ワゴンRでは常温で持っていくしかないので7,8月の暑い時期になってはもう持っていけません。そのため急ぎで販売し始めました。先に聞き込みしたこともあって、地域のニーズと合いびっくりするくらい売れました。売れすぎてもともとお母さん方が好きで作ってくれていたものでしたが、トイトイとしてお願いして作ってもらう形に自然と変わりました。たくさん作ってたくさん売りたいのトイトイと、主婦の性でギリギリを攻めたいお母さん方という構図になりました。そんな駆け引きが行われる中、夏になり移動販売車が来るとさらに売れました。こんなに売れるならと厨房を作ることを決めました。

厨房を作るのも簡単じゃない

厨房は県の事業として補助金を出してもらって作ろうと考えました。もともと厨房になるようなところはなかったので倉庫を完全にリフォームすることになります。そうなると900万くらいかかります。もし補助金がもらえるならおおよそ3分の1の300万くらいでできます。900万売り上げを回収しないといけないと考えると厳しいですが、300万なら現実的だと思いました。なので厨房は作る方針で、いざ補助金を出してもらおうという前に理事会を開いて確認を取りました。するとおじさんたちが反対するのです。それも「借りんといけんのか」とか「そこまでしなくていい」と。おじさんたちは簡単に言いますが高田さんは900万の回収が難しいとわかっているのでどうしても借りたいです。反対するおじさんたちと借りたい高田さんやお母さん方で均衡状態になってしまいました。どうしようとなっているときに鶴の一声。お母さん方が自らの貯金を貸すと言い始めました。そこまで言われたら何を言われても反対していたおじさんたちも折れました。そうして補助金を無事に得ることができ厨房はできました。

厨房ができた後の体制

厨房ができたからといってお母さん方をただただ働かせるのではなく、これまで通り主体性をもって働いてもらいたいと考えました。厨房はお母さん方に任せて好きに使ってもらい、かつ雇用するのではなく利益を分配することにしました。これがトイトイ工房の誕生です。お惣菜の販売をこの体制にし、トイトイが5年目を過ぎたあたりで仕事に余裕も出てきたので一度利益を計算してみました。すると思ってた以上に利益が出ていました。トイトイ工房だけで全体の利益をほとんどまかなってたくらいです。食材の発注はトイトイで行い、発注ができないものはお母さん方がケイバンで買いに行ってました。3年くらい前からはトイトイの副代表である石田さんが買ってきていてトイトイで全て行っていました。この時には移動販売や店舗で売る惣菜だけでなく弁当配達やイベント用のちらし寿司も出していました。阿東地域では弁当を作るところはまだあるものの、配達まで行うところはありません。過疎地域から消えていくところをトイトイがカバーしていこうという意識を持って、今でもトイトイは活動しています。

まとめ

トイトイ工房は地域のためを思ったお母さん方のやさしさでできました。できるまでにはお金がかかったり、補助金をもらうのに反対されたりといろいろありましたが、地域のニーズに沿ったお惣菜は地域から愛され、今では地域にとって欠かせないものとなっています。田舎では地域のニーズに沿ったものが欠かせないものとなり、成功する秘訣かもしれません。

筆者(サイト運営者)

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