地域課題解決の手引き ~①ビジョンの設定~

 こんにちは!まつきおです。現在わたしは地域おこし協力隊として、ミッション「支え合いの中で誰もが笑顔で暮らせる地域づくり」を掲げ活動しています。今回は協力隊の中間支援団体※1としてお世話になっている、特定非営利活動法人ほほえみの郷トイトイ※2の事務局長である高田新一郎さんに、持続可能な地域づくりのためにどうしたらいいのか…をズバリ!インタビューさせていただきました。

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 ※1 中間支援団体:協力隊の生活や活動をサポートする役割を担う中間支援団体。自治会や地域づくり協議会と連携して隊員をフォローしてくれます。

 ※2 特定非営利活動法人ほほえみの郷トイトイ:地域の絆でつくる、笑顔あふれる安心の故郷づくり」をキャッチフレーズに、笑顔で安心して暮らせる地域づくりを行う。(公式HP:https://jifuku-toitoi.com/)

 『持続可能な地域づくりのために何が必要か…まずは、地域の未来像を描く!』

目次

ビジョンの設定をする目的

 地域課題の解決に取り組むために、まずやるべきこと!それは「ビジョンの設定」です。ビジョンの設定をする目的としては以下の2点が挙げられます。

 ◎地域課題解決のために取り組む中で、将来どうすればいいか迷った時や方針を決めるときの行動指標・原理となります。

 ◎地域住民ひとりひとり、もちろんさまざまな思いがあるために、時に感情的になり揉めたり、人を批判してしまう場合があります。そんな時に、ビジョンを設定しておくことで感情ではなくビジョンに基づいて説得することができます。

 この「ビジョンの設定」を疎かにしたまま、地域課題解決のための計画を立ててしまいがちですが、ほとんどの場合が失敗してしまいます。まずは地域住民が「この地域でどうやって暮らしていきたいか」という未来像をもって、そのビジョンのために何ができるかと計画・行動していくことが大事です。

ビジョンの設定をするときのポイント

 さて、「地域の未来像」、ビジョン設定をするときに忘れてはいけないポイントがあります。

 ◎地域の未来を地域住民自らが描き、それを達成するためにビジョンを設定することです。このビジョンを描くのは国でも、行政でも、地域づくりのコンサルティング会社でもありません。その地域に住む地域住民皆さん自身が描く必要があります。

 「地域づくり」と聞くと市や行政のイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでも市や行政は地域課題を解決していく上での支援者であって、当事者ではありません。

 ◎ビジョンは短期的ではなく、長期的なビジョンを設定することです。地域課題の多くが数年で劇的に変化するようなものではありません。現在の地域課題に対して起こした行動が1~2年後の地域にどんな影響を与えるかではなく、10年後、20年後…もっと先の将来で、地域にどのような影響があるかを考えて、ビジョンの設定をしていく必要があります。

 ◎これは地域づくりに限った話ではないかもしれませんが、個人の利益を追求するようなものではいけません。

 ◎「少子高齢化による担い手不足」「人口減少による生活インフラの衰退」「空き家問題」など多くの地域課題は地域において共通課題となっています。理想の地域の未来像は似ることはあっても、全く同じになることはないでしょう。

ビジョンの設定までのステップ

 ▼コアメンバーの人選

  地域住民ひとりひとりの声をビジョン設定の際に盛り込みたいところですが、現実的にはできません。同じ地域に暮らしていても、地域づくりに対しての思いや熱量はピンキリです。地域づくりに対して注力している個人・団体(例えば、敬老会や婦人会などの地域活動を行う団体や、地域の中心となる役員など)をコアメンバーとして募ります。

 ▼意見の出し合い(材料あつめ)

  コアメンバーが決まったら、次に行うのは意見の出し合い(材料集め)をします。

 「地域の未来のために!」という思いがあるのであれば、意見の出し合いをする場ではかならず真摯に意見をだし「正直」であってほしいのと、地域の中でまだ年齢が若いから…などと目上の方に遠慮して意見を出すのをためらったりせず、意見交換の場ではフラット(平等)であることを皆さん忘れないようにしてください。

 また「今まではこうだった」「昔やったけれどうまくいかなかった」といった、過去の経験談に基づいた意見や、誰かの意見に対してマイナスの意見やダメ出しをすることは絶対にダメ!ではないのですが、地域のビジョンをともに考えていく上ではなるべく忘れましょう!

 コアメンバーではないが、地域のために率先して行動している方(または現役は退いたが地域のためにこれまで頑張ってこられた方)からの意見がでたり、ふとはじまった井戸端会議ででた意見などは、コアメンバー経由で協議し、地域の意見のひとつとして加えていきます。


 地域の会議にはよく参加するけれど、いいたいことや自分の利益だけを考えて意見を述べる方も地域の中にはいるかもしれません。本当の意味で、地域の未来を描くならば、地域のこと、地域の未来を思っている方の意見を聞きましょう。

 ▼意見をもとにたたき台をつくる

  集まった意見をもとに、コアメンバーで再度意見をまとめてビジョンのたたき台をつくります。「ビジョン」とともに、そのビジョンを端的に表現できるような「キャッチフレーズ」もつくることで、地域にビジョンを伝えやすくなり、またそれがビジョンを目指すためのコンパスにもなります。

  ここ、阿東地福にあるほほえみの郷トイトイのビジョンとキャッチフレーズは下記の通りです。

 ビジョン:ほほえみの郷トイトイ構想

 キャッチフレーズ:「地域の笑顔で作る、笑顔あふれる安心の故郷づくり」

 前述したビジョン設定の時のポイントである時間軸は将来へあわせ、ビジョン・キャッチフレーズを考えましょう。

 ▼随時、地域へ情報発信を行う

  これまでのステップの過程は、逐一地域に情報発信を行い「知らない間に勝手に決められた!」ということがないようにします。こうした地域のリアルタイムで起こっている(行われている)ことの共有をその都度行う、ということは市や行政ではなかなかできないことですね。

 ▼ビジョンの設定、そして発表

  これまでのステップを繰り返しながら、地域のコアメンバーで練りに練られた「地域の未来像」をビジョンとして設定します。高田さんの経験上、今までと全くことなる唐突なビジョンが設定されることはなく、自然と地域の描く未来像がビジョンとして設定されるとのこと。皆さんの地域のビジョンはどうですか?

  こうしてかたちになったビジョンをキャッチフレーズとともに、地域に発表し伝えることで地域としてどうこれから動いていくべきかがなんとなく、もうみえてくるのではないでしょうか?もし迷いが生じたり、ビジョンの設定後にさまざまな意見が地域からでて方針がわからなくなったとしても、「ビジョン=行動指針」がある限り、道をたがわず前へ向かって歩き続けることができます。

 

 皆さんの地域でのこれまでの地域づくりでの取り組みを振り返って、いかがでしたか?地域の掲げるビジョンは似ていることはあっても、全く同じという地域はないと思います。また、地域でよくいわれる地域課題も「少子高齢化」「空き家問題」「耕作放棄地」「担い手不足」などさまざまですが、その解決策は地域によっても異なることでしょう。

 地域で「地域の未来像」を一番解像度高く描けるのは、その地域に暮らす皆さん自身だけだと思っています。持続可能な地域づくりのため、「地域の未来像」であるビジョンを設定して地域課題解決に向けて歩き出すヒントがこの記事を通して見つけるきっかけとなれば幸いです。

筆者(サイト運営者)

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