山口市阿東から考える少子高齢化社会の現実とその背景(前編) 

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阿東で見た少子高齢化社会の現実

少子高齢化社会のある意味最先端をいく阿東

数年前、私は東京から山口市阿東地域に移住しました。「自然に囲まれて悠々自適に暮らしたい」「都会では体験できない田舎の暮らしをしてみたい」という思いからです。しかし、阿東で暮らし始めてすぐに実感しました――ここは、全国平均を大きく上回る高齢化率と急速な人口減少を背景にした、まさに少子高齢化社会の最前線なのだと。ニュースや統計で聞く「少子高齢化社会」は、阿東では日常の光景として目の前に広がっていました。

移住後、地元のスーパーに行くと、買い物客のほとんどは高齢者で、子ども連れの家族はほとんど見かけません。地域行事に参加しても、子どもの姿は数えるほどしかなく、国の無形重要民俗文化財に指定されている祭りすら、年々子どもの参加が減り開催が危ぶまれる状況です。

都会では当たり前だった「世代が入り混じる日常」が、この地域ではほとんど見られません。この光景を目の当たりにしたとき、「少子高齢化社会はニュースや統計の数字だけでなく、こうして目の前で進んでいる現実なのだ」と強く感じました。

少子高齢化社会が地域に与える影響

この「少子高齢化社会が進んでいる」という実感は、統計データにも裏付けられています。山口市の公式データ(山口市公式HP「日常生活圏域ごとの人口・高齢者数・高齢化率・認定者数(住民基本台帳各年3月31日時点))によれば、阿東地域の高齢化率は60.9%に達しています。これは、市全体の高齢化率30.6%と比較しても、非常に高い数値です。総人口4,649人のうち、高齢者は2,830人、つまり住民の半数以上が65歳以上という現実があります。

  仁保・小鯖
大内・宮野
大殿・白石
湯田
吉敷・平川
大歳
陶・鋳銭司・名田島
秋穂二島・秋穂・嘉川
佐山・小郡・阿知須
徳地阿東市全体
令和6年総人口(人)42,96230,47344,94158,1654,8984,649186,088
高齢者人口(人)13,3248,69110,59318,8082,7482,83056,994
高齢化率(%)31.028.523.632.356.160.930.6
認定者数(人)2,3611,8631,9083,72264163611,131
令和5年総人口(人)43,51630,65345,151​58,440​5,056​4,858187,674
高齢者人口(人)13,2378,63510,46518,791​2,797​2,90156,826
高齢化率(%)30.428.223.232.255.3​59.730.3
認定者数(人)2,3731,8831,943​3,713​689648​11,249
日常生活圏域ごとの人口・高齢者数・高齢化率・認定者数(住民基本台帳各年3月31日時点)

驚くべきところはまだこれだけではありません!なんと、この少子高齢化社会は山口県内での比較にとどまらず全国地域別にみても、阿東地域はかなりの少子高齢化社会であるところがわかります。

内閣府『令和5年版高齢社会白書』 高齢化先進県となる山口県

山口県は高齢化の進行が早く、内閣府『令和5年版高齢社会白書』(内閣府HP「令和5年版高齢社会白書」)によれば、全国平均の高齢化率は30%前後ですが、山口県は35.3%。秋田県(39.0%)に次ぐ「高齢化先進県」とされています。その中でも阿東地域は突出しており、県全体の約1.7倍という異常な水準にあります。まさに「市町村単位で最も深刻な少子高齢化社会」といえるでしょう。

東京では実感できなかった少子高齢化社会―阿東での暮らしが教えてくれた現実

東京で暮らしていた頃は「少子高齢化社会」という言葉はピンときませんでしたが、こうして超のつく「少子高齢化社会」の中で暮らしてみると、地域広報に掲載されている「阿東全体の人口」が地域おこし協力隊として活動した3年間の間だけでもマイナスに転じている…。なんならもう10年、20年後には現在の人口の半分(または半分以下)になるとされている現状で、今後この地域での暮らしが成り立つのかと不安になったり、どう地域を維持していけばいいのかと感じます。

ここまでで、阿東地域の少子高齢化社会の現状と、私自身が移住して体感した日常の様子をご紹介しました。しかし、人口減少と高齢化が地域に与える影響は、表面的な数字や日常の光景だけでは語り尽くせません。中編では、阿東で暮らす住民の生活やコミュニティ活動にどのような変化が起きているのか、実際の事例や統計データを交えながら、少子高齢化社会の現実をさらに深く掘り下げていきます。

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